HIV感染症と最も重複感染の多い性感染症、それが梅毒です。
ここでは梅毒がどんな性感染症なのかを甥っ子陽介に説明します。あなたの梅毒感染予防にお役立てください。
(甥っ子陽介)おじさん、梅毒ってどんな性感染症なんですか? |
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(私)陽介、「昔梅毒、今エイズ」って知ってるか? |
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◇梅毒とはこんな性感染症です
(陽介)え?「昔梅毒、今エイズ?」何ですか、それ?
(私)一番怖い性感染症だよ。エイズが登場するよりずっと前、梅毒は不治の病として恐れられたんだよ。感染するとこれといって有効な治療法がなく、最後には死に至る病気だった。
(陽介)そうなんですか。梅毒って、いつごろからあるんですか?
(私)おじさんが調べたところ、梅毒が日本に入ってきたのは室町時代、1512年とされている。中国から入ってきたそうだ。
(陽介)うわー!むちゃ古いですね。
(私)そうだね。まぁ、さすがにそんな古い時代の正確な記録はないので、最近のデータを見てみよう。
グラフ1.新規梅毒感染者の推移(性感染症検査完全ガイドより)
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グラフ2.梅毒感染者の年代別分布(性感染症検査完全ガイドより)
こんな感じだね。梅毒という性感染症はHIVやエイズと同じ、全国どこで感染者が見つかっても7日以内に報告するよう義務付けされているんだよ。全数報告の対象になってるんだ。
(陽介)そうなんですか。でも、このグラフを見るとここ数年、感染者が急増していますね。しかも60歳以上にも感染者が多いですね。
(私)その通り。梅毒は男性同士の性的接触による感染ルートが最大原因と言われているんだよ。
でも最近は若い女性にも急速に感染者が増えている。母子感染の報告件数も増えてるしね。
2017年には43年ぶりに5,000人の大台を大きく突破してしまった。
(陽介)ホントに急増ぶりが目立ちますね。原因はなんでしょうか?
(私)専門家が色々指摘しているけど、実際のところ何が梅毒急増の原因なのか、まだよく分かっていない。
1つにはこれまで梅毒感染者の報告が確実に実施されておらず、それが正確に報告されるようになって表に出る数字が増えたのではないかという指摘もあるよ。
HIVと違って梅毒は薬で完治できる病気だからね。扱いが軽くなって報告を忘れてしまったり、確信犯で報告しない医師もいるらしい。⇒補足資料①
(陽介)そうなんですか。それじゃ今までが実態を示す数字じゃなかった可能性もあるんですね。
(私)そうだね。元々梅毒の感染力は非常に強いので、HIV感染者の2倍から3倍はいるはずだと指摘する医師もいたしね。
(陽介)今、年間のHIV感染者ってだいたい1,500人くらいですよね。そうすると梅毒感染者は3,000人から4,500人くらいはいるってことですか。
最近のデータからみると、その指摘は当たってますね。
(私)まぁ、梅毒について確実に言えることは決して過去の終わった病気じゃないってことだよ。現在でもなお、感染には十分注意する必要があるね。
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◇梅毒の感染ルート
(私)梅毒の病原菌は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)というスピロヘータ科の細菌だよ。これがその写真だ。⇒『梅毒トレポネーマの写真』
(陽介)うわー!気持ち悪いですね~!こんなのが体内に入ってくるんですか!
(私)そうだよ。その感染ルートは3つあるんだ。
●性行為感染
とにかく感染力が強いので、コンドームだけでは100%感染予防することが出来ない。
性器以外に患部ができればそこにも病原菌がいて感染源になる。オーラルセックス、アナルセックス、素股行為なども感染する可能性があるし、口内に患部があればキスでも感染してしまう可能性がある。
●母子感染
母親が梅毒に感染したまま出産すると、赤ちゃんに感染して先天梅毒児となってしまう可能性がある。
あるいは死産、流産、早産の原因となることもある。だから妊婦健診には梅毒検査が入っていることが多い。
●血液感染
輸血などによって、梅毒の病原体に汚染された血液が入ることによって感染する。
ただし、今の日本では医療環境が整備されており発生の可能性は低い。
(陽介)おじさん、感染ルートは分かりましたけど、梅毒の感染予防はどうすればいいんですか?
(私)そうだね。性行為感染ではまずコンドームの使用だね。それからあまりよく知らない相手の場合は体に異常がないか目で確かめることも必要だね。
(陽介)なるほど。コンドームだけでは十分ではないってことですね。分かりました。
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◇梅毒の潜伏期間と症状
(私)梅毒は感染してから約3週間くらいして症状が出る。
だけど症状の出方には個人差があって、なかなか気が付かないこともある。
そして梅毒の症状は第一期から第四期まで、四段階に分けられているんだ。
●第一期
発症してからおよそ3ヶ月くらいまでの期間。感染した部分に赤いしこりが出来る。
大きさは小豆大から、指の先くらいの大きさ。
発症場所として、男性で多いのは亀頭部、包皮などで女性で多いのは、大小陰部、子宮頸部など。
このしこりは特に痛みはなく、放置していると2週間から3週間で消えてしまう。
この第一期ではあまり不快感を伴う異常が出ないため、自分が梅毒に感染していることに気付かないことが多い。
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●第二期
感染して3ヶ月後から、およそ2年くらいの期間。バラの花びらをまき散らしたようなバラ疹が全身に現れる。(梅毒性バラ疹)
痛みもかゆみもなく、数週間で消える。小豆大の赤い盛り上がった発疹が、外陰部や肛門のあたりに出る。
また、顔や手足に出ることもある。
この第二期までが感染力が強く、二次感染のリスクが高い時期とされる。
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●第三期
感染して2年から3年が過ぎた後の期間。全身に硬いコブのような「結節性(けっせつせい)梅毒ゴム腫」ができる。
放置しておけば自然と消えるが、跡が残る。
第二期までに治療を受ける感染者がほとんどのため、現在この第三期をみることはめったにない。
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●第四期
感染してから10年以上経過した後の期間。病変が、脊髄や脳、心臓、中枢神経にまで及ぶ。
脊髄がおかされると足に刺すような激しい痛みがあり、歩行出来なくなる。また、下半身がマヒ状態になることもある。
脳がおかされると進行性マヒとなり、言語障害や誇大妄想、判断不能状態など、痴呆症状が現れる。
日常生活は困難となり、最後は死に至る。
ただし、現在の日本では第四期まで進行した患者をみることはない。(特別な場合を除く)
(陽介)うわー、梅毒って早く治療しないと飛んでもないことになりますね!
(私)その通り!まぁ、たいては第三期に移行するまでに症状が出て治療を受けることになるね。
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◇梅毒の検査方法
(陽介)おじさん、梅毒の検査はどうやるんですか?
(私)うん、大きくは2通りの方法があるよ。
1つは血液による梅毒血清反応検査、もう1つは梅毒の病巣から検体を採取して顕微鏡で病原菌を見つける方法だ。
(陽介)うーん、何だか難しいですね。
(私)要するに、梅毒感染によって生成される抗体を見つけるか、梅毒の病原菌を直接見つけるか、この2通りだ。
(陽介)どちらの検査方法が多いんですか?
(私)それはもう梅毒血清反応検査だよ。保健所でも病院でもこの検査が一般的だね。
(陽介)それはなぜですか?
(私)梅毒血清反応検査は血液を採取するだけで検査が可能なんだ。
でも梅毒の病原菌を見つけるには必ず病原菌が含まれる検体を採取する必要がある。
梅毒の感染初期や症状が何も出ていない時期には難しいんだよ。
梅毒検査は皮膚科や泌尿器科、婦人科でやってくれるよ。
また、保健所でもHIV検査と同時検査を条件に無料・匿名で検査を行っているところが沢山ある。
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◇梅毒の治療方法
(私)梅毒って、昔は有効な治療法がなく、感染すると長い年月をかけて感染が進み、最後は死んでいった。
でも今ではペニシリンなどの抗生物質で完治できるようになったんだ。
(陽介)梅毒は死ぬ病気ではなくなったんですね。
(私)そうだよ。ただし、完治できるといっても早期発見・早期治療が大事だね。
早く見つけて早く治療を開始すれば治るのも早いんだ。
おじさんが「性感染症 診断・治療ガイドライン」(日本性感染症学会)で調べたところ、こう書いてあった。
◇梅毒治療のための抗生物質投与に必要な期間
●第一期での治療・・・・2週間から4週間
●第二期での治療・・・・4週間から8週間
●第三期以降の治療・・・8週間から12週間
(陽介)なるほど。これを見るといかに早期発見、早期治療が大事か分かりますね。
(私)そうだろう。さて、梅毒がどんな性感染症か、およそのことは分かったかい?
(陽介)はい。何となく分かりました。
梅毒は感染すると主に皮膚疾患を発症しては潜伏を繰り返しながら感染が進行する病気ですね。
早期に見つかればペニシリンで完治できるんですよね。
(私)そうだよ。では、最後にとっても大事なことを説明するね。
実は梅毒はHIV感染と最も重複感染が多い性感染症なんだ。
HIV感染が分かった患者に梅毒検査を行うとかなり高い確率で陽性者が見つかる。
(陽介)そうなんですか。それじゃHIVと梅毒は両方同時に検査した方がいいんですね?
(私)まさにその通り。病院でどちらか片方の感染が分かれば、ほぼ確実にもう片方の検査を行うと思うよ。
それに多くの保健所がHIVと梅毒を両方いっしょに無料・匿名で検査しているよね。
(陽介)なるほど。でもおじさん、もしもHIVと梅毒の両方を同時に感染したら、いったいどうなるんですか?
(私)いい質問だね。おじさんが調べたところによると、梅毒感染者がHIVにも重複感染すると、梅毒単独感染よりも危険な状態になることがあるんだ。
「性感染症」利部輝雄著(悠飛社)によれば、通常は感染から3年くらいかかる梅毒感染第3期までが、わずか数ヶ月で進行してしまうこともあるそうだよ。
また進行が速いだけでなく、症状も重症となり神経梅毒になることもあるらしい。
(陽介)うわ~!怖いですね。それじゃ梅毒に関しては早期検査とHIVとの同時検査、この2つが大事なんですね。
(私)そうだね。梅毒は感染初期にはなかなか気が付かない場合もあるから、不安な行為に心当たりがあれば症状がなくても検査を受けた方が安心だね。
それからもう1つ。梅毒に感染しているとHIVにも感染する確率が高くなる。
(陽介)え?どうしてですか?
(私)梅毒に感染して炎症や潰瘍(かいよう)が出来ると、そこからHIVが侵入しやすくなるからだよ。健康な人の何倍も感染しやすくなってしまう。
(陽介)うーん・・・そうなんですか。それじゃますますHIVと梅毒は両方同時に検査した方がいいってことですよね。
(私)そうだね。
(陽介)はい、分かりました。
(私)では梅毒についての説明はこの辺でお終いだよ。
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補足資料
①梅毒感染者が実際にはもっと多いとする医師の指摘の例
『増え続ける梅毒』