厚生労働省エイズ動向委員会から公表される新規HIV感染者、新規エイズ患者の定義とはいったい何でしょう?
どうやって集計されているのでしょうか。
私が調べたことを甥っ子の陽介に話しますので、あなたもいっしょに聞いて下さい。
(甥っ子陽介)おじさん、新規HIV感染者、新規エイズ患者の定義って何ですか? |
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(私)陽介、それはねちゃんと診断基準があるんだよ。 |
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(陽介)へぇ、どんな診断基準ですか?
(私)詳しくは「エ イ ズ 発 生 動 向 調 査 の 概 要」このサイトを見て欲しいんだけど、ざっくり言えばこうなるね。
●HIV感染者
スクリーニング検査で陽性、確認検査でも陽性判定となった人。この場合HIV感染症と診断される。
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●エイズ患者
HIV感染症と診断され、更に予め決められているエイズ指標疾患を1つ以上発症していると認められた患者。
(陽介)あ~なるほど。これは前に「HIVとエイズのちがいは?」ってお話でも教えてもらいましたね。
(私)そうだね。この診断基準は厚生労働省エイズ動向委員会で決めたものだよ。HIV感染者とエイズ患者の動向を調査するために決められたんだ。
(陽介)つまり、HIV感染者とエイズ患者を集計するためには、まずその定義が必要だったわけですね。
(私)そうだね。「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」というのがあってね。
日本全国、どこの医療機関でもHIV検査でHIV陽性が確定した患者については、さっきの診断基準に基づいてHIV感染者又はエイズ患者として7日以内に管轄の保健所に届け出る法的義務があるんだ。
(陽介)なるほど。
(私)届け出る用紙も決められたものが用意されているんだ。
(陽介)報告をもらった保健所ではどうするんですか?
(私)保健所はオンラインを通して都道府県知事、及び中央感染症情報センター(国立感染症研究所感染症情報センター内)に報告することになってる。
(陽介)それで全国のHIV感染者、エイズ患者が集計される訳ですね。
(私)そうだね。ただ、ここで注意が必要なのは、HIV感染者もエイズ患者も、「新規」ってつくことだ。この意味が大事だね。
(陽介)「新規」って、文字通り新しくってことでしょう?
(私)まぁそうなんだけど、ここでは「初回報告票で報告された」って意味だね。
(陽介)どういうことですか?
(私)報告票には「初回報告票」と「病変報告票」があるんだよ。
●初回報告票
初めて患者を診断した報告書。ここでのHIV感染者が新規HIV感染者、エイズ患者が新規エイズ患者として報告される。
初回報告票は診断から7日以内に提出の法的義務がある。
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●病変報告書
いったんHIV感染者として報告された患者がその後エイズを発症した場合、あるいはエイズ患者として報告された患者が死亡した場合に出される報告書。
病変報告に法的義務はなく、報告は任意とされている。
(陽介)なるほど。
(私)ここで間違っちゃいけないのは、「新規HIV感染者」は「新しくHIVに感染した人」じゃないってことだ。
HIVに感染して10年目にHIV感染が分かって報告されても「新規HIV感染者」だからね。
(陽介)つまり「報告が新規のHIV感染者」って意味なんですね。
(私)その通りだ。この定義はエイズ動向委員会が動向調査するために作った定義だからね。別に医療のため、治療のために作った定義じゃないし。
(陽介)そうだ。それで1つ思い出しました。
先日、ある個人のブログでHIV感染者とエイズ患者の件数のことが書いてありました。
エイズ動向委員会の報告だと、たいだい毎年新規HIV感染者が1,000人くらい、新規エイズ患者が500人くらい。
なぜ、エイズ患者はHIV感染者の半分なのか?
それは、抗HIV医療が進歩して、HIVに感染してもエイズを発症しなくなったからだ、そう書いてありました。
これって、今のおじさんの説明からすると間違いですよね?
(私)そう、間違いだな。
仮に今みたいにいい治療法が見つからなくて、HIV感染者が次々にエイズ患者になったとしても、それはさっきも説明した通り「病変報告票」で報告され、新規エイズ患者としてカウントされない。
新規エイズ患者はあくまでも、
「HIVに感染しているのに気付かず、エイズを発症してしまった人」
なんだよ。
つまりHIV検査も抗HIV治療も受けず、いきなりエイズを発症した人だ。
(陽介)分かりました。
(私)ただね、今の集計方法には課題もあるんだよ。
(陽介)どんな課題ですか?
(私)例えば、重複問題だよ。異なる医療機関から同一患者の報告が出てきても、報告票には個人を特定する情報がないから分からない。
あるいは、すでにエイズを発症している患者が病院に行った場合、HIV検査の結果はすぐに出るけどエイズ指標疾患の認定には時間がかかる。
すると、新規エイズ患者であるにもかかわらず、新規HIV感染者として報告され、その後病変報告となってしまう可能性もある。
これらのケースでは正確な動向調査が出来ないよね。
(陽介)なるほど。確かに起こりそうな問題ですね。
(私)初めに紹介した、「エ イ ズ 発 生 動 向 調 査 の 概 要」にはこうした課題、問題の詳しい説明と改善提案が載っているよ。
(陽介)そうですか。後で読んでみます。
(私)それじゃそろそろ今回の話を終わろうか。新規HIV感染者、新規エイズ患者の定義、そして集計方法が分ったかい?
(陽介)はい、おじさんありがとうございました。
(私)では今日はこれでお終いだ。