HIV検査に関する国の研究とは、いったいどんなテーマなのか?今回は私が調べたことを甥っ子の陽介に話します。ぜひあなたもごいっしょに聞いて下さい。

 

(甥っ子陽介)おじさん、HIV検査に関する国の研究ってどんなことをやってるんですか? (私)陽介、それは複数の研究テーマがあって、複数の研究員がいるんだよ。
陽介 私

(陽介)この前、ネットで『厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV検査相談の充実と利用機会の促進に関する研究」班』という、メチャ長い肩書の研究班があるって知ったんですよ。でも、いったい何の研究をしてるのかなって思ったんです。

(私)うわぁ~、こりゃまたとんでもなく長い名前だね。いかにもお役所的だ。

(陽介)普段僕たちって、国がこんな研究班を作って何かHIV検査の研究してるなんて知りませんものね。

(私)まぁそうだね。でも、実はこの研究班のことは以前に私も興味があって調べたことがあるんだよ。

(陽介)え!そうなんですか?いったいどんな研究をしているんですか?

(私)うん、それはね、こちらの厚生労働省関連サイトで紹介されている。

『HIV検査相談マップ』

この研究班では大きくは次の3つのテーマを扱っているんだよ。

(1) HIV検査相談の利用機会を促進するための研究

(2) HIV検査相談体制の実態を把握するための研究

(3) HIV検査技術の向上に関する研究

詳しくは先ほどのホームページを見てもらうことにして、ここでは次の5つの具体的課題について話してあげよう。

1.献血者への働きかけにより感染リスク行動のある献血者をHIV検査相談機会に繋げるための研究

2.歯科受診者に対する検査相談機会の検討

3.インターネットで購入可能な自己検査キットの調査・対策

4.新たなHIV遺伝子検査法の開発

5.HIV検査技術の研修と普及

この6つだよ。

(陽介)1番目の課題はまた名前が長いですね。

(私)うん、これはね、要するに献血がHIV検査目的にならないようにするにはどうすればいいかって研究だよ。

(陽介)あ~、そういうことですか。2013年の11月末に献血からHIV感染が発生して大きな社会問題になりましたもんね。

(私)そういうことだ。今、国内の献血件数は年間に500万件くらいで、その全てをHIV検査してるんだが100件くらいのHIV陽性が見つかっている。(図1)

献血件数とHIV陽性件数
図1.献血件数とHIV陽性件数の推移

(陽介)このHIV陽性の中には献血をHIV検査代わりに使った人がいるかも知れませんね。

(私)う~ん、それはもう本人にしか分からないね。献血前に問診はあるけど、それが本当かどうか、確かめるのは難しい。

(陽介)それはそうですね。

(私)2013年の献血によるHIV感染発生を受けて、日赤血液センターでは2014年8月からHIV検査を強化している。それまでNAT検査は20件まとめて行っていたのを、1件ずつの完全個別検査にしたんだよ。

(陽介)あ~、それは『献血で個別NAT検査開始』でも教えてくれましたね。

(私)そうだったね。しかしNAT個別検査でもHIV感染直後に献血に来られてしまうとパスしてしまう危険性があるんだ。

(陽介)だから献血をHIV検査代わりに使うことは絶対にダメですね。

(私)だからこの課題ではいかにして献血がHIV検査代わりに使われるのを防ぐか、その方法を研究してるんだ。

(陽介)そうですか。目的は分かりましたけど、かなり難しい課題ですね。だけど問題はとても重大ですから何とかいい方法を研究してもらいたいですね。

(私)その通りだね。さて、2番目は歯医者の先生が、患者の口の中を見てHIV感染が疑われる場合には積極的にHIV検査を勧めようというテーマだ。

(陽介)どいうことですか?歯の治療とHIV感染と何か関係あるんですか?

(私)大ありだよ。HIVに感染してエイズ発症までに、色んな症状が出ることがあるんだけど、その1つが口腔カンジダ症だ。

(陽介)どんな病気なんですか?

(私)カンジダ菌とは真菌でまぁ、カビの一種だね。これは常在菌と言って健康な人にもいる、珍しくない菌だ。健康な状態なら免疫力が働いてカンジダ菌が増殖することはないから発症しない。ところがHIVに感染して免疫力が低下すると発症することがあるんだよ。

(陽介)なるほど。それで口の中を見れば異常に気付く訳ですね。

(私)そうなんだよ。HIV感染者の9割は何等かの皮膚疾患を発症すると言われている。口の中の粘膜も可能性があるんだよ。だから一般の皮膚科や歯科の医師がHIV感染の早期発見につながるように注意することは大事なんだ。私が読んだ複数のHIV・エイズ専門書にもそうした指摘が度々出てくる。

(陽介)なるほどです。本人がHIVに感染しているとは思ってない場合、ここで見逃がすとエイズ発症前に見つけることが難しいかも知れませんね。エイズ専門病院以外の普通の町の病院でもHIV感染への配慮がいるってことですね。

(私)そう、だからとても大事なテーマだね。では、3番目だよ。これは以前、陽介にも話したよね。自己検査キットの安全性、信頼性についての調査だね。

(陽介)覚えてます。『自己検査キットってなに?』というお話でしたね。

(私)そうだよ。自宅で使える検査キットで、なおかつ自分で検査結果の判定まで行うやつだ。ほとんど全て海外からの輸入品だね。これらの中には安全性、信頼性の低いものがあり、現在でも厚生労働省は使用しないように呼びかけている。

(陽介)そうでしたね。でも、かなり使用する人が増えているんでしょう?

(私)そうみたいだね。ネットの広告も増えたし、何よりこうして研究課題に挙がってることがそれを証明している。

(陽介)場合によっては厚生労働省としても何等かの手を打つ可能性もあるんでしょうか?

(私)う~ん、どうだろうね。利用者に被害が出てるような調査結果が出れば可能性もあるね。まぁ、自己検査キットは使わずに保健所に行くのがベストだね。どうしても保健所まで行けない人は郵送式のHIV検査キットを使って欲しいね。

(陽介)え~っと、4番目は新たな遺伝子検査法の研究ですか。これって何のことですか?

(私)HIVというウイルスは非常に変異を繰り返すウイルスなんだよ。一口にHIVといっても、HIV-1とHIV-2の2種類があることは陽介も知ってるね?

(陽介)はい。『HIV-1とHIV-2はどうちがう?』と言うお話で教えてもらいました。

(私)そうだったね。実はHIV-1の中にももっと細分化されたサブタイプがあるんだよ。HIVは容易に変異を繰り返すウイルスなので常にその姿を変えていく。だから現在流行しているのがどんな遺伝子を持つHIVなのか、それを研究してHIV検査に生かそうというテーマだね。

(陽介)なるほど。遺伝子が変われば遺伝子検査の方法も変わる可能性がある訳ですね。今一番流行している遺伝子をターゲットにした遺伝検査をするために必要な研究なんですね。

(私)そういうことだね。そして最後はHIV検査の技術を向上させていく研究だね。現在、保健所や病院などで行われているHIV検査は抗原・抗体検査であり、第四世代のHIV検査と言われている。

検査項目/対象 第一世代 第二世代 第三世代 第四世代
HIV-1
HIV-2 ×
IgG抗体
IgM抗体 × ×
p24抗原 × × ×
ウインドーピリオド 35~45日 25~35日 20~30日 15日~20日

(陽介)はい。これも前におじさんに教えてもらいましたね。『HIV検査の世代交代とは?』ってお話しの時でしたね。(表の説明については関連サイト参照)

(私)こうして第一世代からの移り変わりを見てみると、検査精度が良くなって、ウインドーピリオドが短くなっていったのが分かるよね。

(陽介)本当ですね。

(私)今後も更に検査方法は改善されて、第五世代のHIV検査が出てくるかも知れない。

(陽介)ウインドーピリオドがもっと短くなったり、偽陽性が減ったりしますかね?

(私)どうだろうね。でもそうなるといいね。ともかく、こうした研究を日夜続けてる訳だよ。

(陽介)日頃はあまりこうしたHIV検査の研究の話って表に出ないですよね。実はずっと継続的に研究されてるんですね。

(私)うん、今後の成果を大いに期待したいね。では今回の話はこれでお終いだよ。

(陽介)おじさん、ありがとうございました。

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