HIVに感染して2週目から6週目ごろに、風邪に似た症状が出ることがあります。

これを急性HIV感染症と呼びます。

HIV感染の不安を持つ人が、発熱や発疹、咽頭炎などの症状が出たとき、

「もしやHIV感染の初期症状ではないか?」

と不安になっています。

ここで私がHIV感染の初期症状について調べたことを甥っ子に話しますので、ぜひあなたもごいっしょに聞いて下さい。

なお、このページの記事は長いので目次を用意してあります。目次の見出しをクリックすると、その記事までスクロールします。

■1.HIV感染症の初期症状とは?

■2.HIV感染の初期には体の中で何が起きている?

■3.急性HIV感染症の現れる時期とは?

■4.急性HIV感染症の症状を見逃さない!

■5.HIV感染が分かった人の30%以上はすでにエイズ!

◇1.HIV感染の初期症状とは?

(甥っ子陽介)おじさん、急性HIV感染症って、どんな症状が出るんですか?教えてください。
陽介
(私)陽介いい質問だね。これは陽介だけじゃなく、多くの人が知りたがっている情報だよ。
困った私


(陽介)そんなに多くの人がHIV感染の初期症状を知りたがっているんですか?

(私)そうだよ。試しにネットの相談サイトを見てごらん。

Yahooの知恵袋、gooの教えて、どの相談サイトも「HIV」や「エイズ」で検索すると、必ず初期症状についての相談、質問が沢山出てくる。

(陽介)へぇ~、そうなんですか。でも、どうしてそんなに初期症状についての相談や質問が多いのですか?

(私)それはね、HIV感染の不安を持っている人が熱を出したり、リンパ腺が腫れたり、あるいは咽頭炎などになると、これはもしかしてHIV感染の初期症状ではないのか・・・と、不安になるからだよ。

(陽介)ハァ・・・そんな症状で不安になるんですか?

(私)よし、陽介にも分かるように話してあげよう。そもそもHIV感染症とは自覚症状のない病気なんだね。

エイズ発症状態まで進行すればニューモシスチス肺炎やカポジ肉腫などの日和見感染症で自覚症状が出る。

でも、エイズ発症前は無症候期といって、自覚症状がないんだ。

(陽介)だから自分がHIVに感染していることに気が付かないんですよね。

(私)そうだよ。それがHIV感染症の怖いところでもある。

でもね、そんなHIV感染症も感染初期にはいくつかの症状が出ることがあるんだ。

(陽介)どんな症状なんですか?

(私)それがね、けっこう微妙なんだよ。HIV感染症特有の症状というのではなく、頭痛や発熱、のどの痛み、下痢、リンパ腺の腫れなどの症状なんだ。

(陽介)えー!それって風邪の症状と同じじゃないですか!僕なんか風邪ひいたらいつもそんな症状が出ますよ!

急性HIV感染症の症状

(私)そうだね。陽介の言う通りだよ。風邪や単なる体調不良でもそんな症状は出るよね。ちっとも珍しいことじゃない。

そこが急性HIV感染症のややこしいところなんだよ。

ちょっとでもHIV感染の不安を持っている人が、熱を出したり、のどが痛いとその症状を急性HIV感染症の症状じゃないかと思ってしまう。

(陽介)そうか!それでHIV感染が不安になる人が多くいて、でも実際に感染しているかどうか分からないからネットで相談するんですね?

(私)そうなんだよ。一応、急性HIV感染症の症状と、それがHIV感染者に現れる頻度のデータを見せてあげよう。

症状 頻度(%)
発熱 96
リンパ節腫脹 74
咽頭炎 70
発疹 70
筋肉痛・関節痛 54
下痢 32
頭痛 32
吐き気・嘔吐 27
肝脾腫 14
体重減少 13
口腔白苔 12
神経症状 12

「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)から引用

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◇2.HIV感染の初期には体の中で何が起きている?

(陽介)はー・・・けっこう頻度の高い症状って、まさに風邪や単なる体調不良と区別のつかないものばかりですね。

でも、どうしてこんな風邪と似た症状が出るんですか?

(私)うん、それはねHIVに感染すると急激に体内でウイルスが増えてしまうからなんだ。

感染した直後にはHIVを攻撃する免疫機能、つまり抗体がまだ出来ていない。

だからHIVはどんどん自分のコピーを作って数を増やすんだよ。

そして急増したウイルスが血管に入り、全身に回ってしまう。

これをウイルス血症といい、熱が出たり咽頭炎になったりするんだ。

つまり急性HIV感染症の原因はHIV急増によるウイルス血症だとされている。

(陽介)ふ~ん、じゃおじさん、HIVはどのくらいの数に増えるんですか?

(私)私は以前に「抗HIV検査ガイドライン」で調べてみた。

するとHIVに感染して1週間、2週間後には血液中のHIV RNA量が100万コピー/mlを超えると書かれてあったよ。

(陽介)HIV RNA量って何ですか?

(私)HIV RNA量というのはね、ウイルスの量を測る指標だよ。HIVというウイルスには遺伝子がRNAしかないんだ。

遺伝子でよく聞くのはDNAだよね。陽介もDNAは知っているだろう?

(陽介)はい。DNAはよく犯罪捜査で犯人を特定するのに指紋と同じように使われていますよね。

(私)そうだよ。私たち人間も動物も、遺伝子はDNAとRNAの2つを持っているんだ。

でも、ウイルスにはDNAかRNAか、どちらか1つしかない。HIVはRNAしかないんだ。

(陽介)そうなんですか。それで血液中のHIVのRNAを調べれば、どのくらいHIVが存在するか分かるんですね。

(私)その通りだよ。HIV RNA量の単位はコピー/mlという単位だ。1mlは1リットルの1000分の1だよ。

そんなわずかな血液の中に、100万コピー以上のHIVが増殖するんだ。

HIVが増殖する

(陽介)何だか気が遠くなりそうですね。感染者の体全体のHIV RNA量で考えたら、天文学的数字になりますね。

(私)うん。だからさっきも言ったけど急激にHIVが体内で増殖して高レベルのウイルス血症を起こしてしまうんだ。

これが急性HIV感染症の原因だよ。⇒補足資料①

(陽介)おじさん、このウイルス血症はどうなるんですか?

(私)それがね、急増したHIVもやがて体内にHIV抗体が出来ると減っていく。

するとウイルス血症も自然と治ってしまうんだよ。ここがまた、HIV感染の怖いところだね。

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◇3.急性HIV感染症の現れる時期とは?

(陽介)おじさん、この急性HIV感染症の症状が出てから消えるまでをもう少し詳しく教えて下さい。

(私)ちょっとこの図を見てごらん。

この図はHIVに感染した人の体内でHIV RNAが増えるタイミングと抗体が現れるタイミングを示している。

急性HIV感染症はHIVに感染して2週目から6週目くらいに起きるんだよ。

HIV RNA量の推移

 

(陽介)なるほど。2週目から6週目と言うと、HIV RNAが増え始めた頃から減り始めるまでの間ですね。

(私)そうだね。ピッタリこの間という訳でもないけど、目安にはなるね。

よくネット上のHIV感染相談で、感染の可能性があった日から2日、3日後にのどが痛くなったとか、頭痛、発熱が出て心配になったという人がいるんだ。

さすがにそんなに早く急性HIV感染症の症状は出ない。

(陽介)なるほど、そうなんですね。それでおじさん、これらの症状はHIV抗体が出来てウイルス量が減っていくと治るんですね。

(私)うん、ほとんどの場合、1週間や2週間程度で自然と治ってしまうんだ。

だからまさか自分がHIVに感染していなんて気付かないことが多い。

(陽介)う~ん、そこがHIV感染の怖いとこですね。ところでHIVの抗体には2種類あるんですね。

(私)人間の免疫機能にはIgG、IgM、IgD、IgA、IgEの5種類があるんだ。

HIV抗体検査で見つけるのはこのうちのIgGとIgMの2種類なんだよ。

(陽介)この図だと抗体が現れた後にHIV RNAが減っていますが、この先はどうなるんですか?

(私)うん、残念だがいったん減少したHIV RNA量は再び増え始める。

HIVというウイルスは人間の免疫細胞の中で自分のコピーを作り、同時に免疫細胞を破壊する。

従ってHIVが増えることはそのまま免疫細胞が減ること、すなわち免疫力が低下することを意味するんだ。

(陽介)それじゃHIV抗体ができてせっかく減少したHIVはまた増えちゃうんですね。

(私)そうなんだ。ただすぐに増えてしまうわけじゃない。

人によっても違うけど、3年、5年、長い人では10年かけて増えていくんだ。

そしてある段階まで免疫力が低下してしまうと、日和見感染症を発症し、エイズとなってしまうんだよ。

(陽介)なるほど、そうなんですか。だからHIVに感染してからエイズ発症までの潜伏期間が何年もかかるんですね。

(私)うん。だから今回話したHIV感染の急性期に現れる風邪に似た症状はとても大事な意味を持つんだよ。

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◇4.急性HIV感染症の症状を見逃さない!

(陽介)大事な意味?それはどういうことですか?

(私)つまり、エイズ発症まで自覚症状の出ないHIV感染症において、急性期の症状は自分のHIV感染を疑うチャンスなんだよ。

(陽介)でもおじさん、さっきも話したけど急性HIV感染症の症状って、風邪やただの体調不良と同じですよね。

熱が出るたびにHIV感染を疑っていたらキリがないと思うんですけど・・・・。

(私)確かにそうだ。いちいち心配してたらキリがない。必要以上に神経質になる必要もないね。

ただ、だからといって全く、無関心でいるのもどうかな。

事実としてHIVに感染した人の初期症状としてかなり高い頻度で現れる症状だからね。

(陽介)うーん・・・いったいどうすればいいでしょうか?

(私)基本原則として、少しでも不安を感じたらHIV検査を受けることだ。

HIVに感染しているかどうかは症状から絶対に判断できない。HIV検査を受けるしかないんだよ。

(陽介)そうですよね。HIV感染初期の症状は発熱や頭痛やのどの痛みですものね。

(私)さっき、あまり神経質になる必要はないと言ったけど、HIV感染を不安に思う人にとってはやはり気になるよね。

体調不良で下痢したり、風邪でのどがヒリヒリするたびに、

「もしかして、HIV感染では・・・」

と不安が増すばかりだ。

(陽介)そんな人がネット上でHIVに感染していないか相談するんですね。

(私)その通り。でも、いくら相談したって、質問したって、HIV検査を受けること以外では絶対に感染の有無は分からない。

エイズの専門家でも分からないよ。

ましてやネット上で回答する素人なんかに分かるはずがない。気休めにもならないんだよ。

(陽介)分かりました。とにかく何か気になる症状が出て、HIV感染が不安になったらHIV検査を受けることですね。

それで検査結果が感染していないと分かれば安心できますね。

もう熱が出ても、のどが痛くてもHIV感染を心配しなくてもいい。

(私)陽介の言う通りだよ。言い換えると、HIV検査を受ける以外に安心する方法は絶対にない。これは断言できるね。

ネット上には素人が回答するんじゃなくて、医者が回答する有料サイトもあるんだ。

私はそんなサイトにも登録しているんだけど、HIV感染の相談に関しては、ほぼ100%、

「心配ならHIV検査を受けて下さい」

の回答しかない。

(陽介)専門家でも症状からは分からないんですね。

(私)そうだよ。色んな人が、色んな事情で不安になり、色んな症状を相談する。

でも、医者の回答は全ての相談者に対してたったひとつ、

「心配ならHIV検査を受けてください」

これしかないんだ。

HIVが不安な人は検査を

(陽介)おじさん、分かりました。HIV感染が不安になるような症状が出たら、ともかく早くHIV検査を受ける、これが正解だってことですよね。

(私)そうだ。でもHIVに感染した人すべてが急性HIV感染症になる訳じゃない。全く何の症状も出ない人もいる。

だから、仮に発熱や頭痛やのどの痛みがなくても、感染の可能性に心当たりのある人はHIV検査を受けた方がいいんだ。

(陽介)そうか、必ず症状が出るとは限らないんですね。

それじゃ、もっと言えばHIV感染の不安を感じていなくても、感染の可能性がある人はみんなHIV検査を受けた方がいいんですね。

(私)大正解!保健所に行けば無料・匿名で検査してくれる。

ちょっとの時間と手間はかかるけど、もしもHIVに感染していた場合のことを考えると、そのくらいの犠牲はなんてこともないはずだ。

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◇5.HIV感染が分かった人の30%以上はすでにエイズ!

(私)ここでHIV感染の初期に検査で感染を見つけることがいかに重要か、それを示すデータを見せよう。

それが「いきなりエイズ」に関するデータだよ。

「いきなりエイズ」とは、自分がHIVに感染していることに気付かず、エイズを発症して初めて気づくことを言う。

近年、国内では新規HIV感染者は年間で約1,400人から1,500人くらい報告されている。

そのうち約30%の人はHIV感染が分かった時点ですでにエイズを発症している。

つまり「いきなりエイズ」状態だ。

もしも早くHIV検査で感染に気づけばエイズを防げたかも知れないのにね。

高齢いきなりエイズ
厚生労働省エイズ動向委員会データから作成(姉妹サイト HIV感染症の症状完全ガイドより)

注)いきなりエイズの割合=((新規エイズ患者)÷(新規HIV感染者+新規エイズ患者))×100%

すなわち、その年に報告された新規HIV感染者における新規エイズ患者(=いきなりエイズ)の割合を意味します。

グラフを見て分かるように、HIV感染者全体では「いきなりエイズ」の割合は約30%だけど、50歳以上に限って見ると何と50%に達している。

つまり、50歳以上では、HIV感染が分かった時、2人に1人はすでにエイズを発症しているんだよ。

(陽介)そうなんですか。いかにHIV検査を受けない人が多いか、HIV感染に無関心な人が多いかってことですね。

「いきなりエイズ」を防ぐためにHIV感染が気になる人は早くHIV検査を受けた方がいいですね。

発熱や発疹などで迷ったり悩んだりしてHIV検査を先送りしていると危ないですね。

(私)その通りだ。HIV感染の初期症状を気にしてあれこれ悩むより、HIV検査を早く受けることだね。

もしも運悪くHIVに感染していた場合でも、早期治療ができれば体内のHIV増殖を薬で抑えることが出来るんだ。

それでエイズの発症も防ぐことができる。

(陽介)おじさん、それじゃ保健所に行く手間を惜しんでる場合じゃないですね。

(私)そうだよ。ちょっと大げさに聞こえるかも知れないけど、早期のHIV検査は救命的検査なんだ。

エイズ発症前に治療を開始するのと、エイズ発症後に治療を開始するのでは、その後の経過もずいぶん違うからね。

⇒補足資料②

(陽介)よく分かりました。HIV感染の初期症状のことも分かったけど、やはりそんな症状に関係なくHIV感染の不安があれば早く検査を受けることが大事なんですね。

ましてや怪しい症状があれば余計に検査を受けた方がいいってことですね。

(私)それが今回の結論だね。しょせん何かの症状からHIV感染を判断することは出来ない。

だから発熱や頭痛などの症状に悩むよりもまずは検査だね。何度も言うけど、早期のHIV検査は救命的検査となるからね。

どうしても保健所や病院へ行けない事情のある人は、自宅で郵送式のHIV検査キットもあるからね。

そうしたものを利用してでもHIV感染不安は放置しちゃいけないと思うよ。

(陽介)分かりました。ありがとうございました。

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補足資料

①急性HIV感染症とは?(HIV感染症の症状完全ガイド)

姉妹サイトに詳しい記事があります。

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「これでわかるHIV/AIDS診療の基本」(南江堂)、「HIV感染者の早期発見と社会復帰のポイント」(医薬ジャーナル社)などに生存率の記述があり。

エイズ発症前に治療を開始した方がエイズ発症後に治療を開始するより明らかにその後の生存率が高い。

また、「抗HIV治療ガイドライン2012年版」(厚生労働化学研究補助金エイズ対策研究事業)においても抗HIV治療の早期開始がエイズ発症の防止、予後の生存率向上に効果的との記述あり。

もっと詳しく知りたいあなたは当サイトの姉妹サイトへどうぞ。⇒『HIV検査があなたの命を救う』(HIV検査完全ガイド)

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